今は無きCDPAから2004年10月1日に発売された『Silhouette』(シルエット)をプレイ。批評空間で「埋もれてる名作」タグが付いてたのでずっと気になってたんですが、この度ようやく現物を見つけたので購入。
一番のミソである佳純姉ルートは確かに良かったです。伏線の張り方も巧かったし、絆が深まっていく二人の姿はよく描けていたと思います。特にラストの姉さんの気持ちを知るところは本作最大の名シーンでしょう。
ただ如何せん、そこに至るまでの日常が文章的にもシステム的にも退屈。他キャラルートもいまいちパッとせず、特に玲美なんてせっかくいい設定をしてるのに活かしきれていないです。もう少しシナリオの平均点が上がれば名作になる可能性はあったと思うんですが…
設定は面白かったので、ベースはこのままで矛盾を無くすように構成し直して、演出のメリハリ、システムの改善をすればかなり面白くなりそう…と言ってももはやメーカーが無いんですよねぇ。本当に、色々ともったいない作品だったと思います。
詳しい感想は以下から。
【シナリオ】愛情を注ぐということは、それを無くしたときの悲しみを大きくすることだこれが幼い頃に両親を亡くした主人公・志野浩輔の信念で、学校でも積極的に絡んでくる友人・信也を除いては親しい人がいなかった。しかし過去に自分の心を救ってくれた女性のシルエットそっくりなメインヒロイン・柚月麻弥と出会ったことで、彼の心は少ずつ変わっていく―
唯・耀子・明日菜は純粋な学園純愛モノ。自称他人に関心を持たない志野クンが、特に深い理由も無く好きになって結ばれるという心温まるストーリー。明日菜シナリオは最後が良かったと思いますが、それでも凡作の域を出ないかなぁという印象です。
麻
弥・玲美・佳純ルートがこのゲームが評価されている所以。特に姉の佳純シナリオは思わずうるっとします。こちらは志野クンがなぜ人と心を通わすことを敬遠
するのかというのを軸に展開していきます。出だしは平凡組と一緒ですが、中盤で衝撃の中二設定が明かされ以降はシリアスな感じになります。また佳純ルート
と称していますが、基本は麻弥ルートなのでがっかりしないように。
ちなみにネタバレすると ※から※まで反転
※
志
野と玲美は先天的に催眠術を使える人間で、お仕事の関係で学園にいた。その学園で幼い頃自分を救ってくれたあの人=麻弥?を見つけ、色々考えた末我慢でき
ずに告白する。しかしよく知らないからということでフられる。志野はあまりのショックのため「自分を好きになる」と催眠パワーが炸裂しそうになり、葛藤の
末意識と、そして記憶を失う(自分に催眠術をかけた)。これが舞台の1年前の話。そ
の後普通に麻弥と恋仲になるが、事件の捜査のために玲美たちによって覚醒させられる。しかしそれによって愛する姉は既に亡き人だったことを思い出したり、
麻弥と付き合っていたけどそれは無意識で自分が催眠術を使っていたからではないかという疑念やらなにやらで錯乱していく。そんな志野を救うのは?本当の愛
とは― ※ という感じ。やってからしばらく経ってるので微妙に間違ってたらごめんなさい。
平凡組は誰からプレイしてもいいですが、後ろ三人は麻弥→佳純→玲美で攻略するのをオススメです。いや本当、玲美シナリオはもうちょっと頑張って欲しかった…
主人公が自他ともに認めるクールボーイなはずなのにやたら赤面したり他人に心揺さぶられまくりだったり、日常シーンが退屈だったりと細かい部分を見ていくとイマイチなんですが、全体的な流れは上手くできていたと思います。韓国人シナリオライターあなどりがたし。
【グラフィック】上が唯先輩で下が玲美。ご覧の通り女の子はムッチリめ。パースがちょっと不自然ですが、細かいことは気にしない人間でありたいですね。原画はANICDさん。韓国の方なので、多分想像する通りの人だと思います。
麻弥・佳純以外は普通のCGが10枚以下とちょっと寂しい枚数。そして麻弥も「え?これをわざわざCGにするの?」という(子供の頃の写真とか)のが多々あるのでここら辺のバランスを考えて欲しかったですね。
【システム】
今作でもっともネックな部分。まず全てにおいてレスポンスが悪いのが一点。起動→ブランドロゴ→間があって→メニュー表示ですからね。セーブ&ロードもなんだかもっさり開きます。
あと既読スキップが無いのも残念。2004年には実装されてたと思うんですが…通常スキップもそんなに早くないです。
音楽は割りと秀逸。明るい曲より暗い曲のが出来がいいですね。特に「The end of sadness」とか良かったです。やはりピアノ曲は映えますね!
【まとめ】
冒頭でも描いたように、色々と惜しい作品だと思います。多種多様な作品が出た今では過大評価気味にも感じますが、シナリオの根幹にあるもの、構成はなかなかなモノなのでプレイする価値は十分にあると思います。今なら中古かDL販売もしていますので、興味のある方はぜひ!
いやー本当、今風に作り直せば絶対名作になると思うんですけどね…